今すぐに愛しい者を約束通り迎えに行きたい気持ちがあったが、それは結月の『平和な日常』を壊してしまうのではないだろうかと朔は考えるようになった。


 やがて、朱羅は涼風家の次は一条家を標的に行動を開始する。
 妖魔退治の長である涼風家を失い、朱羅を筆頭とした妖魔の勢いが増した。


「朔様っ! 愁明家の当主が朱羅に倒されました」

「──っ!」


 繰り返される一条家と朱羅の攻防はまるで、朱羅が遊んでいるかのようにすすめられた。
 守り人や多くの犠牲を払いながらも、なんとか妖魔を退治し、綾城を守り抜いてきた。

「朔様。妖魔が綾城郊外にも迫っております。このままでは結月様を危険にさらすことになるかもしれません」

 その言葉を聞き、朔は結月を自分のもとに呼び寄せることに決めた。

「千十郎。結月を綾城へ」

「──っ! かしこまりました。すぐにそのようにいたします」


 千十郎が去ったあとも、朔はこれでよかったのかと自問自答した。

(必ず守り抜く。結月だけは命に代えても……)






 朱羅は朔の凄みに一瞬畏怖した。

(結月のことを出した途端にこれか)