あどけない笑顔を見せる少女に心惹かれ、そして朔はその少女、結月を想い続けた。



 しかし、そんな朔にも残酷な別れが待ち受けていた。

「父上……?!」

 ある日、時哉は一条家の屋敷に血だらけで帰った。
 すぐに医者が駆け付けたが、もう手の施しようのない傷を受けていた。
 
 侍女を含め、一条家に仕えるものは時哉と朔の二人きりにして最期を見守った。

「父上、どうしてこのようなことに……」

「いいか……よく聞きなさい……これは一条家の当主が持つ天牙の太刀だ。肌身離さず持つように」

 時哉から太刀を受け取ると、ゆっくりと頷く朔。

「それから、涼風家が襲われた」

「──っ!」

 涼風の名を聞いた朔の心臓は飛び跳ねた。
 結月は無事だろうか、と心配になり、父の言葉を待つ。

 その感情を読み取ったように時哉は結月の無事を朔に伝えた。

「涼風家の姫君は三条の千十郎に預けて保護している。それから、涼風家を襲ったのは朱羅という者だ。だが、決して争ってはならない。助けてやってほしい、あの子を……」

「父上……? 父上?!!」