一刻ほどたった頃、結月はなんともいえない不快感に襲われた。
 禍々しく自分の首を絞めてくるような、息ができない状態に陥る。

「やはり生きていたか、涼風の娘」

 結月の頭の中で声が響く。それは深い深い闇の底から聞こえるような低い男の声だった。

(誰……)

「オマエが持っていたとはな」

 結月は呪縛を解こうとするが、まるで効果がない。そればかりかさらに絡まるように禍々しい瘴気の渦に捕らわれるようだった。

「いずれ……」

「──っ!!」

 結月は布団をはねのけるように目が覚めた。

「はぁ……はぁ……なに……今の…………」

 悪夢だったのか、と思った刹那、首に違和感を覚えた。
 鏡を見ると首に瘴気の跡が見えた──