しばらくそこで佇んでいると、やがて外で足音がした。

(こんなところにだれ?)

 結月はそっと分厚い蔵の入口扉から外を覗く。
 そこには一人の少年がいた。

 そして、二人は目があった。


「だれ……?」

「お前はここの一人娘の……なぜこんなところに一人でいる?」

「……あそんでた。おにいちゃんは?」

「一条朔だ。一条家の息子……とお前に言ってもわからないか。いつもの侍女はどうした?」

「いない……。ゆづきのまえからいなくなっちゃった……」

(侍女が辞めてそれで落ち込んでいるのか)

 朔は蔵の中に美術品の多くを確認すると、硝子細工のうさぎを見つける。

「俺も中に入って見ていいか?」

「……うん」

 朔はゆっくりと結月を驚かせないように距離を取りながら、蔵の中へ入った。
 そうして、先ほど見つけたうさぎを手に取ると、結月に渡す。