「結月はまだふさぎ込んでいるのか」

「ええ、あの侍女に懐いていたもの。この家にはもう来ないと言ったらずっとあの調子で……」

 庭の池に泳ぐ金魚を見つめ、虚ろな目をする結月。
 その結月を両親は心配そうにただ見守るしかなかった。

 侍女がいなくなったのは半月前。
 結月は知らないが侍女は病に伏せってしまい、田舎で静養するために涼風家を去った。
 ただ、幼い結月は『自分の前から突然いなくなった』としか思えず、落ち込み何日もふさぎ込む生活をしていた。


「そういえば、今日は時哉の代わりに朔くんが来ると言っていたな」

「ええ、時哉さんがどうしても政(まつりごと)で手が離せないからと……」

「時哉も最近元老院にやんやん言われて大変らしいからな」

「心労にならなければ良いのだけれど……」