──結月の自室。


「ん……」

「気がついたか」

 布団に横たわる結月の目の前には、朔の顔があった。

「朔様っ!」

「全く面倒をかけさせるな」

「すみません……凛さんは無事ですか?」

「ああ、お前のおかげでな。…………礼を言う」

「とんでもございません!」

「具合はどうだ」

「気分はいいです。でもどうして朔様がここに……」

「たまたま寄っただけだ」

 そういう朔は目を逸らしてそっけない顔をしている。
 それが『嘘』であることを結月はわかっていた。

「ありがとうございます」

「お前が発動した『翠緑の風』は、父親から受け継いだものではないな?」


 結月はその言葉を聞くと、黙って頷いたあと、ゆっくりと語りだした。