「凛さん、ほんとに何もないんですか?」

「はい、もうこの通りです」

「じゃあ、結月ちゃんの力で良くなったってことですか?」

「おそらくは……」

 凛はそう答えつつも、自分自身の身に起こったことをあまり理解できていなかった。

(魁に刺されたあと、意識が混濁する中で、結月さんの懸命に叫ぶ声を聞いた。私を”呼び戻す”声を……)

 凛と瀬那は薄暗い廊下を通り、泉水の間へと向かう。

(あの声を聞かなかったら私は確実に……)