【宝玉】を眺める朱羅に、魁が話しかける。

「朱羅様、一条家の人間たちが【宝玉】に気づいたようですね」

「ふん、凛。あいつらを殺してこい」

「あいつらとは?」

「一条家の犬どもだ」

「守り人を殺せと?」

「ああ……そんな名称だったな」

「涼風結月は?」

「あいつは連れてこい、あいつと朔は俺が殺す」

「わかりました。ですが……」


 朱羅は目を細めて凛を見る。
 凛は強い殺気を宿しながら、朱羅に宣言する。

「朔を殺すのは私だ」

「ふ、ははははは!」

 朱羅は肩を揺らしながら滑稽だというように笑う。

「かつての主人に牙をむくか。そこまで殺したがっているならやってみろ」


 凛はそのまま朱羅に背を向けて、屋敷から出て行った。


 凛のいなくなった屋敷で、朱羅がつぶやく。


「【宝玉】か……」