──朱羅の屋敷。

 (かい)が朱羅の傍で跪く。

「朱羅様、愁明凛を連れてまいりました」

「連れてきたか」


 凛があたりを見渡すと、そこは意外と質素で暗い和室だった。
 縁側からは庭も見える。


「約束のものを持ってきましたよ」

 凛は【宝玉】を自らの着物の胸元から取り出し、手に取った。
 【宝玉】は木箱に厳重に入れられており、紺色の紐で結ばれている。

 朱羅はゆっくりと凛のほうへ向くと、【宝玉】に目を向けた。

「それが一条家の【宝玉】か……」

「はい」

 凛は朱羅に【宝玉】を渡した。
 朱羅はゆっくりと紐をほどき、木箱の蓋を開ける。

 中には神々しく光る丸い【宝玉】があった。

 朱羅は【宝玉】を手に取り、月の光にかざす。

「綺麗なもんだな……」

「一条家の宝ですから」