結月は逸る気持ちを押さえながら、朔の自室へと向かっていた。

(朔様っ!)

 朔の自室前に到着した結月は、入室の許可を取るのを忘れ、そのままふすまを開けた。

「朔様っ!」

「──っ!」

 朔は目を見開き、状況が掴めないという表情をした。
 しかし、すぐに書物に目を通し始める。

「なんの用だ」

「え? 凛さんが朔様がお呼びだと……」

「…………あの馬鹿」

「?」

 朔は小声で凛に文句を言った。