「凛さん」

「はい、なんです?」

「私にとって凛さんは素敵な男性で、胸が高鳴ったのも事実です。ですが、私はたとえ好かれなくても、朔様が好きです。ごめんなさい……」

 結月は涙を拭き、凛に謝る。

「なぜ謝るのですか。私にあなたを振り向かせる力がなかった。それだけです。さぁ、行きなさい」

「はい!」

 結月はお辞儀をすると、廊下を走って朔の自室へと向かった。

「廊下は走らないと前もお伝えしたのに、これはまた叱らないといけませんね」

 凛は結月の去った部屋で一人、月の光を眺めていた。
 部屋の畳にはわずかに雫が流れ落ちた──