「結月、私はあなたが好きです」

「は……はい、私もです」

「いいえ、あなたは私を見ていない」

 結月ははっとしたような表情を浮かべ、その後気まずそうな顔をする。

「あなたは朔のことがやはり好きなんです。それは見せかけの婚約者なんかじゃない。私にはその壁を超えられませんでした」

「……」

「悔しいですが、朔を忘れさせることは今現状できなさそうです」

「凛……」

 凛は結月の腕を離す。

「おゆきなさい。朔が自室で待っています」

「朔様が……」

「朔にこう伝えてください。『あの日の借りは返しましたよ』と」

「? わかりました」