婚約者としての責務を終え、部屋に帰る。

「おかえりなさいませ」

「ただいま」

 そこにはいつものように美羽が待機していた。
 出迎えると、部屋の中でゆっくりと結月の着物を脱がせていく。

「ねぇ、美羽?」

「なんでしょうか?」

 美羽は帯に手をかけ、ゆっくりと結月の身体を解放していく。
 すると、美羽の手元に雫が落ちた。

 ふと結月を見上げると、子供のように泣く結月の姿があった。

「結月様……?」

「人を好きになるって……恋ってこんなに辛いんだね……」

 美羽はその様子を見て、そっと結月の背中をなでた。