「朔様、結月様をお連れしました」

「──ああ」

 朔の反応はあっさりしたものだった。
 それに、朔は結月と目を合わせなかった。

(目を合わせてくださらない……)

 結月は朔の心が完全にここにないことを悟った。

(駄目、泣いては……。朔様には想い人がいるし、私には凛さんがいる。もう、忘れなきゃ……)


 結月は目に涙を浮かべたが、目を逸らしている朔がその様子に気づくことはなかった──