年に一度、一条家では当主と一条家の分家筋で構成される組織・元老院(げんろういん)の宴会がある。
 いわゆる形式的な食事会のようなものであるが、そこには通例として当主の婚約者や妻も同席する運びとなっていた。

「結月様、綺麗です!」

「ありがとう」

 結月は艶やかな朱色の着物に着替え、食事会の準備をしていた。
 しばらくすると、永遠(とわ)が結月を呼びにきた。

「結月様、朔様のご準備も整いましたのでこちらへどうぞ」

「わかった」

 結月は着飾った姿で朔のもとへ向かった。

(朔様は綺麗だと思ってくれるかな?)

 期待に胸を膨らませた。