──せせらぎの森。


 結月と凛は半刻ほど歩いたところにある川のある森に来ていた。
 澄んだ水が綺麗なところで、人気はない。


「結月さん。見てください」

「──っ!」

 そこには、蛍の光が広がっていた。
 結月は見たことのない光景に驚きを隠せない。


「驚きましたか?」

「この時期は毎年蛍がやってくるのですよ。とても綺麗でしょう?」

 結月と凛は隣に立ち、蛍で広がる景色を楽しむ。
 自然の結月は笑顔になり、うっとりと眺める。

「綺麗ですね……」

「はい、毎年、私の密かな楽しみなんです。結月さんに見せられてよかったです」

 結月と凛の目が合う。
 蛍の光が二人を包み込むように、静かに明かりを燈している。

 凛は結月の手を握ると、そっと自らの手で引き寄せ、抱きしめた。
 そのまま結月のうなじのあたりに顔をうずめながら、凛は言う。