「俺じゃだめか? 結月」

「──っ!」

 結月の鼓動は激しくなり、凛の言葉に翻弄されていた。

「俺の気持ちは抑えようとしてた。幼なじみの婚約者だし。だけど、無理だ。悲しんで苦しむ君の姿をもう見たくない」

「凛さん……」


 その瞬間、ふすまが一気に開く。
 廊下には朔の姿があった。

「朔っ!」

「朔様っ!」

 朔は結月の上にかぶさる凛を見て状況を確認すると、二人の傍に近づく。