「私にしませんか?」

 結月は凛の胸の中でその言葉を聞く。
 はじめは理解が追いつかなかった。

「朔のことは忘れて、私にしませんか?」

 結月はどうしていいかわからず、胸の中で聞き続ける。
 いつの間にか涙は止まっていた。

 凛は結月が落ち着いたのを見ると、そのまま結月を押し倒した。

「──っ!」

 結月は突然の出来事に赤面する。

「私は結月さんが好きです。朔の婚約者になったあの日、突飛な子が来たと思いました。しかし、次第にあなたの真摯な態度や行動に惹かれました。朔に一途に、ひたむきに心を寄せるところもかわいらしく、好きです」

 凛は片方の手で結月の両手を押さえながら、片手でゆっくり頬をなでる。

「なんで朔のことが好きなんだろうって何度も思ったよ」

 凛の細く長い指が、結月の唇をなでていく。