「朔様と侍女の方が、口づけをしているのを見てしまいました」
「……」
凛は黙って結月の言葉に耳を傾けている。
「朔様は婚約者です。でも、思い出してしまいました。私たちは仮初めの婚約者。朔様は、私のことが好きではないと」
結月は俯き、言葉を続ける。
「同時に気づきました。自らの気持ちに。私は朔様が好きです。朱羅をおびき寄せるためではなく、本当に……本当に朔様を好きになってしまった」
夕日は沈み、月が顔を出してくる。
「こんなに苦しいと思いませんでした。恋が……。だからこそ、口づけを見たときは頭の中が真っ白になりました。どうしていいかわからなくなりました」
結月は自分自身も気づかぬうちに涙を流していた。
「朔様には好きな方がいらっしゃるのに……私は朔様を好きになってしまった。それが辛いんです。苦しいんです。だから──っ!」
言葉を遮るように、凛は結月の腕をつかみ、自らの胸元に引き寄せて抱きしめた。
結月の持っていたお猪口が床に転がって、残ったわずかな酒が零れ落ちる。
「私にしませんか?」
夜の始まりを告げるように、月が輝き始めた──
「……」
凛は黙って結月の言葉に耳を傾けている。
「朔様は婚約者です。でも、思い出してしまいました。私たちは仮初めの婚約者。朔様は、私のことが好きではないと」
結月は俯き、言葉を続ける。
「同時に気づきました。自らの気持ちに。私は朔様が好きです。朱羅をおびき寄せるためではなく、本当に……本当に朔様を好きになってしまった」
夕日は沈み、月が顔を出してくる。
「こんなに苦しいと思いませんでした。恋が……。だからこそ、口づけを見たときは頭の中が真っ白になりました。どうしていいかわからなくなりました」
結月は自分自身も気づかぬうちに涙を流していた。
「朔様には好きな方がいらっしゃるのに……私は朔様を好きになってしまった。それが辛いんです。苦しいんです。だから──っ!」
言葉を遮るように、凛は結月の腕をつかみ、自らの胸元に引き寄せて抱きしめた。
結月の持っていたお猪口が床に転がって、残ったわずかな酒が零れ落ちる。
「私にしませんか?」
夜の始まりを告げるように、月が輝き始めた──