「……ぃ。…………ぉい。……おい!!」

「──っ!!」

結月はいきなりの怒声に飛び起きた。

「いつまで寝ているつもりだ。ついてこい」

「???!」

自分の部屋に男がいる。その事実に結月は困惑した。
慌てふためき、その男が朔であると気づくのに十数秒を要した。

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支度をして朔についていくとそこには部屋いっぱいの着物が目に入った。

「──っ!綺麗……」

「好きなものを選べ」

「え……?」

「どれでもやる。気に入ったものをすべて選べ」

結月は朔の意図がわからず、これまた困惑した。

「俺の婚約者なのだから、相応の格好をしてもらう。金は気にせず選べ」

「…………」

(婚約者だからという理由かもしれないけど、こんなに用意してくれて……素直に嬉しい……)

「どうした」

「……いえ、嬉しいです。ありがとうございます、朔様!」

結月は朔に向き直ってこれまで見せたことのないとびきりの笑顔でお礼を言った。

朔は見たことのない結月の笑顔にふいに驚いたのだった──


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廊下を歩き、執務室へと戻る朔に声をかける人物がいた。

「へえ~、朔様は貢ぐタイプですか。それとも俺色に染めたい独占力でしょうか」

意地の悪い顔をして廊下の柱に身体をもたれかけ、声をかける凛。

「うるさい」

からかう幼なじみの横を足早に通りすぎていく朔だった──