──17年前。

 朔は、父である時哉に連れられて涼風家へ挨拶に来ていた。

「千里、うちの息子の朔だ」

「一条朔でございます。本日はご挨拶できまして、光栄でございます」

 千里と妻の静香が、時哉と朔に向かって座る。

「時哉からよく話は聞いているよ。すごい溺愛っぷりでね~」

「おい、やめろ」

「そうなのよ、いつも時哉さん朔さんの話ばかりなの!」

「静香さんもやめてくれ、恥ずかしい……」

「ふふふ」

 静香が手を当てて、上品に笑う。