「……ぃ、……おい」

「ん……」

「起きろ」

「…………っ朔様?!」

 結月は横になる朔の胸に顔を預け、寝ていた。

「本当に本当に朔様ですか……?!」

「俺以外の何に見え──っ!」

 結月は朔に勢いよく抱き着いた。
 その大胆な行動に朔は内心驚く。

「よかった…………、もう目を覚まされないのではないかと……」

「俺は容易く死なん」

 結月は涙を拭い、朔の顔を見つめる。

「はい! 信じておりました」

 満面の笑みで返答をする結月。

「皆さんにも、目を覚まされたこと、お伝えしてきますね」

 ふすまを勢いよくあけ、廊下を走っていく結月。

「……、廊下は走るなとあれほど……」

 見えなくなる結月に、小さな声で婚約者を叱る朔だった。