(あれがそうだったんだ……)

 結月が木の根を軽やかに飛び越え、イグの力を込めてさらに早く進む。

(あれが……朱羅だったんだ……)

 双剣を抜刀したまま握り締めていた結月。
 幼き頃の記憶を呼び起こし、悔しさと憎しみで握り締める手の力が強くなる。

(絶対に仇を取る……絶対に……)


 次第に宮廷が目前に迫ってくる。
 裏門の監視兵には目もくれず、そのまま朱羅のいる気配のする「金翠(きんすい)の間」へと急ぐ。

 廊下を走り抜けていると、部屋の前に永遠(とわ)と美羽がいた。