22年前──

 朔と凛、5歳。
 二人は一条家の屋敷から外に出ようとした。

「いけません、朔様! これ以上外に出られては時哉様たちが心配なさいます」

「構わん。心配させておけばいい」

「それに宮廷の外まで出てしまっては、危険です。お戻りください」

「戻るのはいいが、そうなればここまでついてきたお前も同罪だぞ」

「──っ!」


 子供心に凛は大人に怒られることを嫌がった。
 何より、一条家の子息である朔を外に連れ出したとなれば、一族として責任を取る可能性が出てくる。
 自分はともかく、愁明家に迷惑をかけることも避けたかった。
 なんとしても凛としては、何事もなく早くここから朔を連れて戻りたい思いでいっぱいだった。