宮廷の静さに対し、両雄の殺意が立ち込める。
 凛は主人である朔の後ろに控えながら、戦況を見守っていた。

(下がっていろと言われたが、本当にそれでいいのだろうか……)

 目の前で激しくぶつかり合う両者を見て、そう思った凛。

(しかし、迂闊(うかつ)に手を出しても朔様の攻撃の邪魔になるかもしれない……どうする? なにができる?)

 凛は瀬那と蓮人の気配が消えた際に、朔に言われた言葉を思い返していた。




『お前の仕事はなんだ?』




(結月さんたちを呼び戻す? いや、結月さんをわざわざ遠ざけた意味がない。では、どうする?)

 静観しながら、頭の中で無数の可能性を考える凛。