一方、宮廷では瀬那と蓮人の気配を読み取った朔と凛が胸をなでおろした。

「──っ! よかった……」

 凛は息を一つ吐き、安堵の声を漏らした。

「朔様、瀬那と蓮人はぶ……」

 そこで初めて凛は朔の異様なまでの怒気に気がついた。
 そして、自身もその気配に気づき、朔の視線の先に目をやる。

 朔の目線の先には、臙脂(えんじ)色の着物をきた長髪の男が立っていた。
 その男は鋭い眼光をし、同じく朔を見つめていた。

 凛はその男の恐ろしさを本能的に感じ取った。




 しばらくの沈黙の後、ゆっくりと朔が口を開いた。


「待っていたぞ、朱羅」


 朱羅と呼ばれたその男は不気味に笑った──