「結月さん」

「はい、あの妖魔の気配……何かおかしいです」

 結月と実桜は瘴気を纏う鏡を持った妖魔を追いながら、その異様さに気づいた。
 妖魔は逃げるばかりで、結月や実桜と交戦しようとしなかった。
 屋敷の屋根に上っては降り、屋敷から離れてはまた戻ってくる。
 それを繰り返す妖魔は明らかに『時間稼ぎ』をしていた。

「時間稼ぎも気になりますが、気配が安定しないのも気になります。つまり……」



『あの妖魔は本体ではない』



 結月と実桜はそう同時に心中でそう思った。
 鏡の瘴気や妖魔自体の気配も煙のように揺らめき、一定でない。


 そして、この鬼ごっこは突如終わりを迎えた──