力は均衡を保っていた。
 いや、頭に血が上っている分、瀬那が少し劣っている。

「くっ!」

「……」

 瀬那は次第に敵の行動に違和感を覚え始めた。

(ん? 何かおかしくねえか? 俺、この敵と戦ったことあるか?)

 瀬那がそう考えたのにはわけがあった。
 敵の攻撃の動き、避け方、間の取り方……すべてに見覚えがあった。

「……っ」

「──っ!」

 これまで無言だった敵からわずかに言葉が発せられる。
 瀬那はその動きと言葉から、一つの推測を立てた。


(違う、俺が戦っているのは──!)