「はぁ……はぁ……」

 足がもつれて転んでしまいそうになりながらも、瀬那は庭にかかった橋をわたり父親のもとへまっすぐ駆ける。


 次第に、数度しか訪れたことのない父親の執務室に近づく。
 瀬那は勢いよくふすまを開けると、そこには仕事用の着物に身を包んだ父親がいた。

「はぁ……おとう……さま……」

 瀬那は勢いよく走ってきたため、息が乱れてうまく言葉を紡ぐことができない。

「なんだ、許可なく入るなと母さんから聞かなかったのか?」

「お母様がっ!お母様がっ!危険な状態だと……」

 瀬那は子供ながらに必死に伝えようとする。
 しかし、父親の返答は無情なものだった。