「お前は指揮を執るもの。間違えるな、友情ごっこをしろと命じた覚えはない」

 凛には、その言葉が強く響いた。
 『指揮を執るもの』は常に冷静で戦況を把握し、次の一手を考える。
 それができないものに、部下を守ることなどできはしない。

 朔の叱責を強く噛みしめ、凛は顔を上げる。

「申し訳ございませんでした、朔様。冷静さを失っておりました。結月さん、実桜に伝令を飛ばし、向かってもらいます。私はここで指揮を執ります」

「ああ」

 納得したように朔はうなずくと、再び書類に目を通し始めた。

 凛は式神を出して伝令を飛ばす準備をする凛に朔が告げる。

「凛。抱え込むな。頼れ、俺を。あいつらを」

「──っ!」

 凛は瞼を閉じて呼吸を整えると、式神を出して伝令を飛ばす。

(あなたの優しさには、いつも助けられていますよ)

 凛はもうすでに自分から書類に目を移した朔に、心の中で礼を言った──