結月は必死にこの3日間の出来事を思い出していた。

(えーっと……じいちゃんとばあちゃんのイグが尽きるって言われて、それで綾城に向かってたら、手配書に書かれてて──)

「ああああああーーーーーーーーー!!!!!」

「「「「っ!」」」」

 結月の大声にその場にいた者が驚いた。朔を除いては。

「手配書ー! 手配書にわ、私の名前が!! ってあれ? 私捕まるの……? ……ですか?」

 控え目に丁寧に話すと、答えはすぐに返ってきた。

「ああ、あれは私が貼りました」

「え……?」

 結月が驚いたのは何度目だろうか。
 凛があっさりと自分の仕業だと白状した。

「どういうことだ」

 朔が凛に問う。

「朔様からは『家を出た涼風結月を連れてこい』としか言われませんでしたので、一番手っ取り早く会う方法はこれかと」

 なんの悪びれもなく発言する凛。

「それでいきなり手配書にして出したんですか?!」

「よっぽどそのほうが危険じゃないですか!」

 金髪の男と蓮人はそれぞれ意見した。

「しかし、私一人で探し当てるのはかなり無理がありますし……」

「あの……では、私は偽の手配書で冤罪になり、場合によっては死にかけたと……」

「そういうことですかね」

 結月はこの場で一番恐ろしいのは、凛ではないかと思った。
 にっこり笑いながら人が死にかけることを、平気でおこなったことに恐怖を覚えた。

「あまり勝手なことはするな」

 朔が凛を叱ったが、本人に届いているのかさえわからなかった。

「安心してください。運よく自力であなたを見つけられたので、手配書は取り下げておきました」

(手配書を出された街で暮らすのは不安で仕方ない……)

 結月は心の中で思ったが、育ての親の危篤も嘘であり、涼風家の仇ともいえる存在の正体がわかった以上、ここは一度その婚約者になってもよいと考えた。

(婚約者になることで朱羅が姿を現すかもしれない。涼風家の……お父様やお母様の仇が討てる)

 結月は決心をした。

「一条朔様! 私は……あなたの婚約者になり、朱羅を倒します!」