縁側に座っている朔を見つけると、ゆっくりと近づく。
 近頃は結月も朔との関係に少し慣れ、自らからも声をかけたり、様子を気にしたりするようになっていた。

 朔の顔を覗き込むと、そこには穏やかな顔で寝息を立てている朔がいた。

(朔様の寝顔……はじめてみた……)

 朔を起こさないようゆっくり自らの身体を動かして、横に座る。
 結月がこれだけ近くにいても気づかず、起きない。

(綺麗な顔立ち……、それに意外と可愛いかも……)

 腕を組んで顔を少し傾けながら、ふすまを背もたれに寝息を立てる朔。
 結月は月明かりに照らされたその姿に見惚れていた。

 普段かきあげられた髪が湯あみの後なのか、少し湿り気を帯びて目にかかっている。
 まつ毛は長く、きらりと耳の装飾品が輝く。
 気づくと、結月はそっとその髪に手を伸ばしていた。

(気持ちいい……艶やかな髪……)


 その時、髪に触れていた結月を、朔が勢いよく自身の胸の中へ引き寄せた。

「──っ!」

 結月は驚き、思わず息が止まる思いをした。

「男に不用心に触るとは、ずいぶん無防備だな」

 胸の中で見上げると、そこには意地の悪い顔をした朔がいた。

「朔様っ! 起きていらっしゃったのですか?」

「さあな」