‥‥み、‥‥つ‥‥、な‥‥

「ん?」

 湊が目覚めたのは知らない部屋だった。

「どこだここは?」

 辺りを見渡す。

 薄暗い。

 何処かの部屋のようだ。

 一台のテーブルに座布団が二つあった。

 6畳ほどのワンルーム。

 部屋には湊の他に誰もいない。

 湊は頭を抱えた。

 まるっきり覚えていないぞ。

 確か店の女の子と飲んでいて‥

 そうだ。

 じゃあここは、あの子の部屋だろうか‥

 そう言えばあの後、あの子とどうしたんだっけ?

 いや、こんな所、誰かに見られたら‥‥

 とにかく早くここから出よう。

 服を探して身につけた。

 こんな失態は初めてだ。

 靴を履いて玄関を出ようとした時ドアが開いて女の子がドンっと胸に飛び込んで来た。

「キャッ」

 湊は思わずぎゅっと抱き止めた。

 明美だった。

 明美は湊の顔を見上げ、うっとりした顔で言った。

「あ、ごめん。
起きてるなんて知らなくて。
朝食の材料足りなかったから、コンビニにお買いにものに行ってたの」

 湊は酔い覚ましのように、頭を振って言った。

「明美さん‥だったっけ?
昨日は泊めてくれてありがとう。
なんか迷惑をかけたみたいでごめんね。
かなり酔っていたみたいで記憶なくて。
起きた時知らない部屋にいてびっくりしたよ。
ここ明美さんの家でしょう。
ごめんね。
もう帰るから、朝食なんて要らない。」

 明美はコンビニの袋を取り落とした。

 中で、卵がグシャリと潰れる音がした。

 湊がよく朝食で作る目玉焼きを連想した。

「ごめんなさい。朝食食べてくれるものだと勘違いして」

 明美が泣き出してしまった。

「あ、ああ、今日は朝から打ち合わせがあるから行かないと。
ここにお金置いとくので、ほんと、ごめんね」

 泣き止まない明美を置いて、履きかけの靴でよろけながら出て行った。

ここはアパートのようだ。

 高級クラブの女の子にしては安っぽいところに住んでるなと思った。

 部屋だって女の子らしく飾り付けられた部屋ではなかった。

 どちらかと言うと殺風景な。

 そう思いながら大通りに出てタクシーを拾う。

 あー、きっとあの子に‥しちゃったんだろうな。

 だから恋人気分で‥

 社長にまた大目玉を喰らうぞ。

 自分に嫌悪感を抱きながらテレビ局に向かった。