そんなこんなでお昼休みになり、私と藤堂君は中庭でお弁当を食べることにした。
 今日はカラコンと胸の龍のブローチ以外は、中二アイテムは身につけていないことが救いかな。
 カラコン以外は一見普通に見える藤堂君は、お弁当箱を開けた途端に「わあ」と感嘆の台詞がこぼれた。

「オムライスとから揚げ、それからアスパラのベーコン巻きとタコさんウィンナーにマカロニサラダだよ」

「豪華すぎるよ……」

 藤堂君はそこまで言ってから、ぴたりと動きを止めた。

「どうしたの?」

「ちょっとごめん」

 藤堂君はそれだけ言うと、立ち上がって走って校舎のほうへと行ってしまった。

 突然の行動に意味がわからなくて、私はボー然とする。
 もしかして、嫌いなもの入ってた? それともアレルギー?
 私は藤堂君が心配になって後を追いかけるけれど見つからない。

 すると、私の藤堂君専用地獄耳が彼の声をキャッチ。
 声をたどっていくと廊下の隅に藤堂君がいた。

「ああ、うん。いまお昼だから」

 誰かと電話をしているらしくスマホを耳に当てている。
 藤堂君は私には気づいていない。
 電話じゃあ声をかけられないから、終わるまで待つしかないか。

「うん。大丈夫。え? ああ、やってるよ」

 誰と電話してるんだろうなあ。ついつい盗み聞きをしてしまう。

「そう。例の中二病作戦。うまくいってると思うよ」

 その言葉に、私はハッとする。

 中二病作戦? 
 ってことは、藤堂君は最初からわかっててやってるの?

「なんで?」

 そう言った声が思ったより大きくなって、藤堂君に気づかれてしまった。
 私は彼から逃げるべく階段を上がる。

 意味が分からない。
 中二病作戦ってなに?
 私をからかってたの?
 なんで?
 嫌われてるの?
 あの時、私のことなんか助けなきゃ良かったって思ってる?

 そう思った瞬間。
 踊り場の窓から稲妻が見えた。

 その稲妻に驚いて、私は階段の一番上の段から足を踏み外す。
 スローモーションで見える景色の中、見えたのは藤堂君の顔。
 気づけば私は、藤堂君の腕の中にいた。

 ああ。そうだ。思い出した。