こんなに放課後が待ち遠しいのは初めてだった。
 時間を早送りする能力が欲しい! 向こう一年分のお小遣いをつぎ込んで買えるなら即買いしてる。
 そんなバカなことを考えていたら、待望の放課後になった。

 光の速さで帰り支度をして、楓に「リア充爆発しろ」と言われながら教室を出たところで誰かにぶつかる。

「ごめんなさい」

 そう言って相手を見ると、藤堂君がにっこりと微笑む。

「迎えにきたよ」

 迎えにきたよ。迎えにきたよ。迎えにきたよ。脳内でリフレインする。

「天国でも地獄でもお供します!」

 私はそう言って拳をぐっと握った。
 藤堂君がぷっと吹き出したので、なんだか余計に幸せな気持ちが強くなった。

 どちらから言い出したわけでもなく、私と藤堂君は公園に寄り道をする。
 花と池がメインの緑の多い公園は、遊具がないせいか人がほとんどいない。

 ベンチに腰掛けると、藤堂君が何かを差し出してくる。
 イチゴミルクだった。

「さっき橘さんを迎えに行く直前に買ったんだ。だからぬるくなってるかも」

 そう言って「ごめんね」と申し訳なさそうな顔をする藤堂君を見ていたら、胸がしめつけられるような感覚がした。

 ぬるくなったイチゴミルクは藤堂君の体温だ。
 ああ、私は本当にどうしようもなくこの人が好き。
 中二病でもいいや。
 私は藤堂君の丸ごとすべてを受け入れる。
 私はそんな決意をしてイチゴミルクを一口、飲む。