一時限目の休み時間に机に突っ伏していた私に、誰かがチョップを入れる。
「なに? (かえで)

 机に突っ伏したまま、私は目の前に立っているであろう友人の楓に聞いた。

「爆発しろ」

「いきなりなによ」

 私が顔を上げると、楓はこちらをじっと見つめてにっと笑う。

「祝いの言葉。末長く爆発してくださいってことよ」

「昨日、私が藤堂君と両思いになったから祝ってくれてるんだね」

 私の言葉に楓はこくんと頷く。

 このまま『昨日、両想いになった幸せな人』を演じても良かったのだけど、友人の楓になら今朝のことを相談できるかもしれない。
 そう思って私は今朝の藤堂君の様子が変だったことを説明する。
 良かった彼とクラスが別で。

「それさ、中二病じゃない?」

 私の話を聞いて、楓は即答した。

「中二病って、あの中学二年生が発症するという……。でも私たちはもう高校一年生だよ?」

「絶対に中二で発症するとは限らないよ。遅れてくる子もいるらしいし。なんなら大学生のうちの兄貴だって」

 楓はそこまで言ってから細く長いため息をつく。

「でも、藤堂君がそんな子どもっぽいことするわけない」

「中二病って自覚あるの? あったら学校に眼帯してこないよ」

「それもそうだけど」

 私はそう言ったまま考えこむ。

 すると、「橘さーん」と呼ぶ声。
 この声は藤堂君! そう思った瞬間に反射的に声のしたほうを見る。
 藤堂君は教室の後方のドアの前に立っていた。

 まだ眼帯はしていて、首には十字架のペンダントをつけている。
 さっきはあんなのしてなかったのに。

「あーあ。あれは間違いなく中二病だね」

 楓がそう言って笑い出した。