次の日の朝はどこのチャンネルも同じ特番だった。

 それは地球が地球外生命体によって攻撃を受けていること、それがもう二年前から続いていること。
 そして、地球外生命体と戦う特殊部隊が、秘密裏に育成されていたこと。
 テレビの画面に特殊部隊の十人の顔写真が公表されて、私は味噌汁を吹き出した。

 そこには藤堂君の写真と彼の名前があったのだ。
 パイロットは、胸にみんな龍のバッジをつけていた。
 あれは中二病アイテムじゃなかったんだ……。

『パイロットたちが乗る飛行機は、通称ドラゴンと言うんです。ドラゴンは性能が良いですし、攻撃力も高いんです――』

 専門家だと名乗る初老の男性がテレビでそんな発言をしている。

「本当のこと、だったんだ」

 私はテーブルを拭きながら、呟く。

 中二病だったらどんなに良かっただろう。
 生存確率、三十パーセントだって言ってたな。
 死んじゃうの? 私が彼女になった途端?
 冗談じゃない!
 私はそう言って家を飛び出す。

 とにかく走って、走って、向かった先は真新しい歩道橋。
 ここで二年前、藤堂君に助けてもらって、そして恋をした。
 私は歩道橋の真ん中で、空に向かって叫んだ。

「帰ってきたら、覚えてろよ!」

 私はぺたんとその場にしゃがみこむ。

「帰ってきたら……覚えてろ。離れてなんかやるもんか。私は、なにがあっても藤堂君の彼女なんだから」

 鼻をすすって、勢いよく上を見る。
 滲んだ空には飛行機雲が伸びていた。