明日から、私の新しい生活が始まる。


 それに別れは付きもので、不安や寂しさが胸に去来する。


 私、相澤栞(あいざわしおり)はそんな春らしい事を考えていた。


「折角だし、校内を見てきたら? 生徒として校内を歩けるのは、今日が最後になるのかもしれないわよ」

「はい……そうします」

目の前にいる女性の校長先生に、私はそう返して校長室を後にした。

校長先生の言う通り、最後かも知れないと思って。

帰る前に校内を散策することにする。


 HR教室の並ぶHR棟に、主に文化部の部室が並ぶ部室棟。

それに職員室や校長室、特別教室が集められた本館からなる東峰高校。


 懐かしい。


 今となっては、私の母校と呼ぶべき場所だ。


 私は、まずは本館から散策を始めた。


 そして、ふと足を止めたのは図書室の前。


 ここなら。


 先ほど、職員室、校長室の順で先生方への挨拶を一通り終えた。


 けれど、私の大好きだった恩師の姿はなかった。


 挨拶をしたくて、懐かしい白くて小さな背中を探して、私は静かなその部屋の扉を開けた。