――タイムカプセルを埋めないか。
そう言った先輩はとても良い笑顔で。
私、相澤栞も黒田君や千夏ちゃん、藍佳ちゃんも賛成してくれた。
鳴上先生も急遽呼んで来て、思い思いの物を、三送会で出来たお菓子の空き缶に詰めた。
それを学校の中庭に埋めて、先輩は言う。
「五年後、この桜の木の下で」
「同じ時間に、もう一度集まろう」
俺、忘れっぽいからと鳴上先生が言った。
五年後に、タイムカプセルを開けると先輩から私宛の手紙が入っていた。
先輩に言われて読んでみると、その内容に驚いた。
―――
《幽霊部員じゃない者同士、正反対だけど部活で二人でいることは多かったね。
今更気付いたよ。あの時間案外楽しかったんだ。
栞ちゃんが教えてくれた笑顔の理由、僕も良いなって思う。
笑顔の思い出にしたいって思えたのは栞ちゃんのおかげかも知れない。
栞ちゃんのおかげで部活が楽しかった。ありがとうって伝えたかったんだ。
それで、ここからが本題。
卒業式の日。僕にとって大切な後輩だったって気付いた。
他にも可愛いところをいっぱい、あの一日で見つけて、卒業しても一緒に居たいって思った。
栞ちゃん、キミが好きです。》
―――
最後の行に目が釘付けになる。頭が上手く回らない。
「先輩、これって……」
「僕と、付き合ってくれますか?」
もともと顔が整ってるのに、凄く爽やかな笑顔で言ってくる先輩に、慣れてない私は余計に焦る。
――でも。
先輩が楽しかったと言ってくれた時間は私も同じく楽しかった。
先輩の卒業は寂しくて、でも先輩に涙の思い出は残したくなくて涙をずっと堪えてた――あの日。
――栞ちゃんのおかげ
――ありがとうって伝えたかった
泣いちゃダメだ、泣いちゃダメだ――泣いちゃダメだ。
先輩の前では笑っていたい。
そう思うのに、嬉しすぎる言葉たちがキャパオーバーで。
――止まらない。
――私も、もっと一緒に居たい。
正直、好きかどうかはよくわからない。
でも、先輩の気持ちに似ている気がしたから。
「よろしく、おねがいします」
どうにか、それだけは伝えた。
先輩は優しく笑って、涙を拭ってくれる。
――あぁ、好きだなぁ。
先輩が偶に見せる、その笑顔が大好きだと――今、気づいた。