一日の終わりに行われるホームルームで、クラス担任の()()(がわ)先生から部活動の入部届について注意点を伝えられた。
 ここ最近、提出してもらった入部届のほとんどが希望部活動の欄が空欄らしい。希望する部活の顧問の先生に直接渡しているから別にいいのではと思うが、必要項目はすべて記入しなければ認めらないのだという。必要な人だけ持っていけばいいものを、先生は全員に入部届を配っていく。
「部活動は基本的に有志だ。同好会でもなんでも、入っていれば大学受験や企業就職の際に話のネタになる。入っておいて損はないぞ!」
 かくいう先生は演劇部の顧問をしている。噂では入部希望者が集まっていないようで、そろそろ廃部の二文字が見えてきて焦っているとお誰かが話していた。
 先生が力説を繰り返す中、左肩を誰かが叩いた。にんまりと笑っている早紀だった。
「ねぇ、佐知。やっぱり部活やろうよ」
「また? 何度も言ってるけど、私はバイトで――」
「毎日バイトが入っているわけじゃないんだし、どうせ一人で入るのが嫌なだけでしょ? 私がついて行ってあげるから」
「だからいいって」
「浅野! 話聞いていたか?」
 早紀に気を盗られすぎて先生に指摘される。話しかけてきた当人は知らん顔をしていた。周りの目が私に集中すると、反射的に顔が熱くなる。
「は、はい、すみません……」
「全く……ちゃんと聞いておけよ。お前だけだぞ、入部届出してないのは!」
 さっき部活は有志だと聞いたばかりなんだけど。
「先生ぇー。浅野さんは今どの部活に入ろうか迷っているんですー。もう少し猶予をあげたっていいじゃないですかー」
 言い返すことが億劫な私に代わって早紀が先生に言うと、怪訝そうな顔をしながら「仕方がないな」と呟いて次の話に移った。クラスメイトの視線も先生に戻り、私は胸を撫で下ろした。