交代でかまどの火の番をしていると、学校の方から昼休みを告げるチャイムが聞こえてくる。
 昼食をすっかり忘れていたと思っていたら、宮地さんの奥さんが大量のおにぎりと重箱一杯に詰めたおかずを持ってやってきた。ここではいつものことで、特に美術部の二人がくると張り切って作りすぎてしまうと、恥ずかしそうにしていた。
 先輩たちに合わせて、コンビニのおにぎりよりも二回り大きいものだったこともあって、私は一つでお腹いっぱいになる。キムチとたくあんを混ぜ込んだおにぎりが意外にも美味しいことに感激して、思わず重箱に入っていただし巻き卵と一緒に作り方を教えてもらうほど仲良くなった。
 ベンチが全て炭と灰になったのを見届けると、後は宮地さんの仕事だ。
 後片付けを済ませて学校に戻れば、すでに昼休みが終わって授業が始まっていた。昼食後にも関わらず校庭でランニング中の生徒を見て、思わず苦笑いを浮かべる。
「俺ら、教室に着替えを置いてあるから直接戻るけど、佐知は一人で大丈夫?」
 高嶺先輩が心配そうにこちらを見て言う。私は美術室に制服があるから、今から急いで戻っても授業の途中から参加する形になる。それは先輩たちも同じだ。
「大丈夫ですよ。もう迷いませんから」
「ああいや、そうじゃなくて。……ほら、かなり強引に教室から出てきただろ?」
 そもそも、強引に連れ出したのは高嶺先輩なんだけど。
「大丈夫ですよ。もし本当に居づらくなったら美術室にこもらせてください」
「まだ入学して半年も経ってないのにサボり癖がついたって、長谷川に叱られても知らねぇぞ」
「公欠扱いでしょ? その時は先輩たちを頼らせていただきます」
 私がそういうと、二人は顔を合わせてニヤリと悪い笑みを浮かべる。そして揃って口を開いた。
「お前、そんなに悪い子だっけ?」って。