下津浦慧(しもつうらけい)が失踪した、と3年A組のクラス内がざわつき始めたのは、卒業前の自由登校期間に入る少し前のことだった。
年が明けてから彼が一度も登校していない、誰もその理由を知らない。彼の身になにかあったのでは、とクラスメイトたちの間に動揺が広がり、ついにホームルーム内でひとりの生徒が慧のことについて担任に尋ねた。
しかし担任の女性教師も困惑したように眉をひそめ、「親御さんからも何も連絡が来ていない。何かあればみんなにもすぐに伝える」と答えるだけだった。嘘をついているようには見えなかったので、本当に彼女も何も知らないのだろう。
家出か、はたまた何らかの事件に巻き込まれたのか。
皆が様々な憶測を繰り広げているのを耳にしながら、上城名緒(かみしろなお)は密かに、彼らとは全く異なる理由で動揺していた。
下津浦慧なる人物など、初めからこのクラスに存在していないではないか、と。
年が明けてから彼が一度も登校していない、誰もその理由を知らない。彼の身になにかあったのでは、とクラスメイトたちの間に動揺が広がり、ついにホームルーム内でひとりの生徒が慧のことについて担任に尋ねた。
しかし担任の女性教師も困惑したように眉をひそめ、「親御さんからも何も連絡が来ていない。何かあればみんなにもすぐに伝える」と答えるだけだった。嘘をついているようには見えなかったので、本当に彼女も何も知らないのだろう。
家出か、はたまた何らかの事件に巻き込まれたのか。
皆が様々な憶測を繰り広げているのを耳にしながら、上城名緒(かみしろなお)は密かに、彼らとは全く異なる理由で動揺していた。
下津浦慧なる人物など、初めからこのクラスに存在していないではないか、と。