赤瀬白葉(あかせしろば)。高校三年生。
特に特技もなくて、容姿もどこにでもいる女子高生、みたいな感じ。
ギシ、と言うやや古びたベッドから身を起こし、家族に気づかれないよう扉を開ける。
__午後11時6分、いつもの時間。パーカーとハーフパンツ、加えて、少し前髪にピンをつけてみちゃったり。
少し考え事をして、うーん、と小さく唸り声を出してるうちに、いつの間にか玄関に着いていた。これもいつものことで、スニーカーに足を入れて靴紐をくるん、と結んだ。
ふたつのリボンを少し見つめると、手を付き、立ち上がった。
コン、コン、と靴を整え、ようやっと家へ出た。
もうすっかり外はまっくらで、街はシーンと静まり返っている。
ずっとずっとまっすぐ歩くと、花壇がこちらを見ていて、それに応えるように私も見つめ返す。
左から、朱色、桃色、紅色、青みのある紫色。
ところどころが枯れており、昨日と、一昨日と同じように見て見ぬ振りをする。
べつに水をやってもいいが、私にはそんなことをする暇もない。
というか、この世から消えようとしに行くところなのに、わざわざ自らに善をするつもりもなかった。
……はず、だが。ずっと無視するのも罪悪感を感じ、1歩2歩と徐々に下がってゆく。
「…はーあ、さっさと行きたかったのに」
そうため息を零し、なにか入れ物はないか、と探しに回る。でもそんな都合よくバケツとか水とかある訳がなくて、結局ポケットに運良く入っていた100円を取り出した。
『もったいないな』と一瞬考えが頭によぎったが、そもそも消えに行くならこれくらいの消費は容易いものだった。
しばらく辺りを歩き、弱々しい光を放つ自販機から100円を入れる。
ガタン、と言う音と共に驚き、一時的に身を引く。取り出し口から取り出して、キャップをゴミ箱に捨てる。
水をやる前に1口喉を潤して、ペットボトルを逆さまにした。
すこーしやりすぎちゃったかな、なんて思ったり、でもそれも結局枯れないならいいかな。
ここだけで、11時30分。急げ、と小走りに道をゆく。
立ち入り禁止のテープに手をかけて、次に足をかける。『立ち入り禁止』、なんて書いていても、やっぱり侵入はとてもと言っていいほど簡単だった。
じゃりじゃり音を立てる小石を踏んで、靴でも脱ごうと。

__そんな時だった。