「あのねレイ君、少なくとも君達よりは強いわよ? ガズルちゃんの怯えた様子を見れば一目瞭然でしょう?」

 突然名前を呼ばれたガズルはすかさず後ろへと下がった、シトラは以前の鬼神の如き目でガズルを見つめたからでもある。その様子を見たレイは少し笑いながらそうですねと答えた。

「さて、こんな所でぐずぐずしてると今日中にたどり着けないわよ? 臨機応変に前進!」

 シトラは口笛を吹きながら軽快なステップを踏んだ、その年にしてはとても身のこなしが軽い。その行動に思わずメルが吹き出す、だが静かにだ。

「ほら、ガズル君も何時までも怯えてないで行きましょう?」

 メルが怯えるガズルの後方に回り背中を押す、嫌々に歩くガズルは何処か子供が駄々をこねているようにも見える。その様子に他のメンバーは笑いながらシトラの後に続いて歩いた。

「三番隊隊長か、頼りになりそうだね」

 レイはガズルの背中を押していたメルにそう言った、ようやく背中を押すのを止めてレイの隣を歩くようにしてそばに付いた。

「そうだね、とてもそんな風には見えないのにね」
「全くだ、人は見かけによらないって奴だね」
「あれ、それはレイ君だって同じじゃない」

 二人は笑った、笑いながらシトラの前、つまり先頭を歩く二人が居た。

「結局出来てるって話か」
「みたいだな、羨ましい限りだ」

 ぼそぼそと話し声が聞こえた、正体はアデルとガズルだった。二人は自分たちの後ろを歩くプリムラに聞こえないように小さな声で話した。思えばこの二人も今は恋する少年、それを知ってしらずかレイとメルは二人仲良く並んで歩いている。

「めんどくさい、本当なら俺とレイの二人だけの旅だったのにこんなに付属品が居るなんて馬鹿馬鹿しい。いっそ此奴ら殺しちまおうかな?」

 これもまた本当に小さな声で喋った、ギズーはイライラを募らせながらてくてくと歩いていく。一番後ろを歩いている為に少しながら大きな声で喋っても誰にも気付かれないだろう。

「まぁ、いいか」

 半分あきらめ顔でそう言うと重い足取りをがまんしてすたすたと歩き出した。

「はぁ、あの二人の馬鹿は結局どうすればいいのかな?」

 今度はプリムラだった、つい最近アデルとガズルに告白された事を思い出しながら真ん中より少し後ろを歩いていた。