目の前は真っ暗だった、身体が重たくて身動き取れない状態で少年は暗闇の中宙に浮いているような錯覚を覚える。

「……ここは」

 顔を動かそうとしても自由に動けない、どうして良いか分からずしばらくはそのままの状態でボーっとしていた。
 どの位の時間が経ったのだろう、突然からだが軽くなった感じがした少年は徐に状態を起こそうと身体をひねった。それは簡単に動きそして宙に浮いていた身体を地面に立たせる。

「さっきからずっと真っ暗だけど今は夜なのかな、でも今は冬だし、もしも夜ならこんなに暖かいはずはないんだけど」

 少年は不思議な感覚にとらわれながらその真っ暗な空間を歩き始めた、何処までも続く闇をただ歩き続ける。暫く歩くと一つの光が見えた。ライトで照らした様に一点だけが明るくなっている、そしてそこには扉があった。

「……」

 少年は黙ってその扉を見つめる、何故こんな所に扉があるのか、何故扉なのかと自分に問いつめながら一つの決断をした。

「出られるかな?」

 少年は少し笑いながらその扉のドアノブを回してドアを内側に開けた。するとドアの中から突然光があふれ出して少年の居た空間を明るくてらす。

「っ!」

 突然の光で少年の目は眩み視力が回復するまでにしばらくの時間が掛かった、ようやく正常の視力を取り戻した時少年は暖かい空の下にいた。

「何処なんだここは」

 辺りは地位面の花畑、そよ風が何とも心地よい春の陽気に近い温度だった。自分以外に人間は居ないかどうか辺りを見回すがやはり誰もいない、有るのは一面の花と、一本の樹。それもとてつもなく大きな樹だった。

「すごい、樹齢何百年って有るんだろうな。こんな樹見た事無いよ」

 少年は初めて見る壮大なスケールの樹に近づいた、どっしりと構えた樹に圧倒されながら少年は樹に手を触れた。

「凄いなぁ……この樹はいろんな人の人生を見て来たんだろうな」

 暫く樹に触れていた少年は今自分がもの凄くちっぽけな存在みたいに感じてきた、そしてその樹に身体を預け地面に座る。
 少し丘になっていて樹の根が盛り上がっている所に座っている、アグラをかいてその足の上に手を乗せる。にっこりとしながら丘から見る景色を少年はとても綺麗だと思った。

「ん……」

 ふと少年の目に何かが映り混んだ、人のような人形のような。遠くからではハッキリと何だか分からないほど遠い物が見えた。
 だがそれは瞬時にして移動し少年の方へと近づいてくる、音もなく空間を移動しているように思えた。そして少年の目の前にたどり着く。

「君は?」

 少年の目の前には見た事のない少女が立っている、身体中傷だらけで顔面蒼白。今にも死ぬんじゃないかというほどの出血も見られる。

「やっと会えましたね、レイ」

 少女はにっこりと笑うと少年の名前を呼んだ、レイと呼ばれた少年はまだあどけないく、幼さが残る小さくて純粋な顔をしていた。

「僕の事を知ってるの?」

 レイは首をかしげて言った、笑顔のまま何も言わずに目の前に立っている少女は少しずつだが身体が消え始めていた。

「今はまだ分からないと思う、でも……いつか、きっと分かるときが来るでしょう」
「きっと?」

 少女はほとんどからだが消えた状態でレイの質問に答える、だがその答えはレイの考えている事を更に分からなくさせる答えだった。

「貴方に、大切な人が出来たときです。でも……それは私にとっても、貴方にとっても最後の戦いになるでしょう。それでも、貴方は最後に大切な人を守り、大切な仲間を守る事になります。その時、私が誰なのかが分かります」

 そう言い残して少女は消えてしまった。

「待って、最後の戦いって何なの? 大切な人って、大切な仲間って……」

 レイは必死になって叫んだ、だが何も返事は帰っては来なかった。そして周りの景色が急にぐらつき辺り一面が最初にいた暗い場所と同じ状態になった。
 だが、その暗闇はすぐに解けて何処か、見た事のない場所へと導いてくれた。

「……」

 レイの目の前には紅く染まる空と、やけ焦がれた大地があった。草木は焦げ、空気はどことなく焦げ臭いニオイがした。とてつもなく嫌な感情と今までに体験した事のない圧迫感にレイは怯えた。

「あ……」

 視線を横に移すと何処かで見た事のある少年が剣を構えて立っている、その周りには七人の少年の姿も見える。