「じゃぁ、世界の半分以上は帝国が支配してるって事?」
「そうなるな、半分どころか三分の二は帝国の支配下だ。昔は世界制覇なんてこともあったみたいだけど、昔も昔大昔さ。今じゃ文献でそれを知る程度の事で歴史上何があったかは明確には記載されてねぇ。調べようにも分からずじまいって所だ」

 一通りの事はガズルが一人で喋って終わった、レイとアデルはやっと落ち着きを取り戻したのか体の痙攣が徐々に収まり始めた。この二人に刻まれたトラウマは他の面々が予想する以上なのだとこの時初めて知る。普段このような事が起きることも無く、いざ戦闘となればその強さは折り紙付き。剣聖結界(インストール)すらマスターする精神の持ち主であるのにこの動揺っぷり、修行時代に一体何があったのかを聞きたくなるが……それは各々胸に仕舞い込んだ。

「んで、何か思い出したことはあるのか?」

 一通りの話が終わった所をギズーが睨むようにミトを見て質問をする、それにミトは首を横に振った。

「さっぱり、(もや)みたいなのが掛かっててまるで思い出せないし。それ以上何かを思い出そうとすると頭が割れる程痛くなってどうにもならないわね」
「――っち」

 一つ一つの部品を組み合わせてシフトパーソルの手入れを終わらせようとしていたギズーがもう一度横目でミトを睨みつける。するとギズーの目からは微量の殺気が漂い始める。