「あー、でも帝国に動きが有るって情報だ。各地に散りばめていた兵士を北の海路を使って本国に集めてるそうだぜ、既にフィリップが動いてるらしいけど、一人やばいのが乗ってるって噂だ」

 海上商業組合(ギルド)で得た情報を思い出して目線だけをアデルに向けて喋った、アデルもまたしゃがみ込んで木に寄りかかっている。

「やばいのって言ってもフィリップ公が直接相手すれば苦戦何てしねぇだろ? アレだってまたレイヴンやシトラと同じで俺からすれば兄弟子だ、『雷帝』の異名は伊達じゃねぇぞきっと」
「いや、確かにそうなんだが今回フィリップ本人は動いてない、兵隊を送り込んで何とか阻止しようと試みてるようだが」
「流石王族、自分は高みの見物か。こっちは汗だくで監視してるってのに」

 表情を歪ませてそう呟く、ここ数日の単調な監視作業に飽き飽きしてるアデルは退屈そうに山頂付近に居るはずのレイを見る。姿は見えないが何やら作業しているのは何となくわかっていた。
 午前中から監視作業を続ける三人、気が付けば正午を軽く回った辺りだろうか? ますます気温は上昇している。時折吹く風が心地よいがそれも熱風とも思える熱さが彼らを襲う。流石に我慢できなくなったのかアデルはエルメアの上部を脱ぎ始めた。鍛えられた筋肉が露になりそこに汗が光っている。

「こう暑くちゃたまらないな、ちょっとレイ呼んでくるか?」

 腰を上げて裾をはたきながらギズーがアデル同様に視線を向ける、しかしアデルはそれを制止している。