食事が出来た処でレイの作業も完了した、試作機含めて三台が運用可能であることが分かった。これで五人ギリギリ山を下りることが出来る。乗り合いはこうだ、レイとアデルで一台、ガズルとギズーで一台、そしてカルナックで一台の計三台。食事を終えると馬を放してテントを片づけ始める、忘れ物等が無い事を確認した後それぞれスカイワーズに捕まって各自その場を飛んだ。

 初段ブースターで空高く浮かび上がるとそのまま滑空を始める、先頭にレイ達、二番目にガズル達がきて最後にカルナックのスカイワーズが飛んでいる。その速度は以前のソレとはかけ離れたスピードを誇る。馬と同じかそれ以上の速度で滑空をし三十秒後に二番目のブースターが火を噴く。初段ブースターで上昇した距離よりも遥かに高く飛び上がった。

「あーあー、聞こえますか?」

 突然耳元でカルナックの声が聞こえた、彼等五人の耳には小さなプラスチックが挟まっている。これもカルナックが持ち合わせていた骨董品の一つだ。古代の技術で作られた通信機器でエーテルを媒体とする。エネルギーもその装着者のエーテルを養分に起動するが、座れる量は微々たる量だ。だがこの中で一人だけ聞こえない少年がいる。ギズーである、彼はエーテルを持ち合わせていない。カルナックとは逆に一切エーテルを持たずに生まれてくる人間もいる、これは一年に百人いるかどうかだがカルナックの様に異常な性質ではない。その為ギズーの代わりに一緒に滑空してるガズルが全体の声を伝える。

「聞こえますよ先生、こちらは感度良好です」

 最初に渡された時は何だろうと思った四人だが、その効果には驚きが隠せない。通信範囲は然程大きくないが半径十キロ程度なら届く古代の遺産だという割には保存状態が極めて良好なところも驚かされる一つでもある。

「結構です、目の前の小さな山を越えればあとは平坦な道のりです。この速度なら明日のお昼には到着するでしょう」

 意外と近いところにあるのだと四人は考えたが、発見されてから幾年。噂が広がりいつしか人が立ち寄らない場所になっていた為人が立ち寄らない場所がどうなっているかを知る。眼下に広がる白銀の世界だが人が通れるような道などあまりない、獣道と化したそれらは必然と人間を遠ざける。故に秘境となることが多い。ここもその一つと言える。中央大陸南部の最東端、手前に広がる山々によって塞がれた天然の要塞が更に人々を遠ざける。その結果が此処だ。