苦笑いしながら時計に目をやる。まだ正午を少し回った辺りで掃除も九割終わっていた。懐かしさのあまりコントローラーを操って最後のボスに挑む。ちょっとしたイベントが始まり会話がスタートする、ムービーが流れて戦闘に入った。

「……あれ?」

 戦闘開始数十秒でボスを撃破した、あまりの廃人っぷりに大笑いする。完全クリアすると最後のボスですら物の数十秒で撃破できる事を思い出してエンディングを見る。

「つまらないな、ネットゲーならこんな事は……」

 そこでハッと思い出した、何故このゲーム機をしまったのかを。
 永遠に続くゲーム、オンラインゲーム。クリアする事を前提としないゲームに手を出したのは四年前、仲間からの誘いだった。

「……そうか」

 皆高校を卒業してから各自自分の人生を歩み始めたあの頃、遊ぶ仲間も減ってネットの世界に仲間を求めたあの日、あの時もこんな気分だった。そう思う。
 何年も連絡を取って居ない仲間や地元を離れた仲間。今みんな何をしているのだろうか。
今でも地元に残って時々遊ぶ仲間も、僕の都合と相手の都合が合わず遊ぶ機会も減っていた。だからこそネットゲームに手を出した。
 それを思い出して、唐突に淋しくなった。このゲームのデータがそれを物語っていた。一人で遊ぶには丁度良く、時間を潰すにはあまりにも長い。このプレイ時間が語るものは仲間と一緒に同時プレイした証。エンディングが終わりスタッフロールが流れ始めた時、背景で流れる音楽に涙流す。

「……あぁ、そうだよな。そうなんだな」

 独り言を呟いて俯いた、当時の仲間ともう一度遊びたい。あいつらから貰った事を思い出し、切なく感じ、途轍もなく胸が苦しくなる。

「……掃除、続けるか」

 ゲームの電源を落して押入れにまたしまい込んだ、今度は乱雑にではなく、本体の上にタオルを被せて埃が掛からないようにした。
 拭い取った埃をはたいて、過去の僕の事も一緒に払う。風に運ばれて宙に舞、遠くへと飛ばされて行った。

「何も淋しくは無い、今の俺も楽しいもんだ」

 そう涙を拭ってタバコに火をつけた。