「どうでもいい奴なんか怒らねぇよ」
「そんなもんか?」
「どうでも良く無いから俺はお前に怒る、その上司もお前の事を立派に育てたいから怒る。どうでもよかったら怒らない、放置されるだろな」
「俺は放置された方が楽だ」
「んじゃぁ、もう俺も怒らない方がいいか?」

 そこでまた沈黙が生まれた、小さな音がスピーカーから流れる音楽だけが車内に広がっていた。

「それも困る」
「世話の焼ける奴だ……」

 そう笑いながら言い、目的地の無いドライブは海へとたどり着いた。
 真冬の海はとても寒くて、どこか気持ち良かった。潮風と一緒に太陽の暖かい光を浴びながら二人は伸びをする。

「次は少し上司の事も考えて見るよ」
「お前は上司の事を考えるより先に俺の事を考えろ」

 二人は笑った、ボンネットに腰を掛けて今度はタバコを二本取り出して二人で分けた。